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Column

太祖瑩山禅師 700回大遠忌

2024.06.09

「曹洞宗の総本山は福井県にある永平寺だよね?」

 巷ではそのようによく聞かれます。確かに間違いではないのですが、曹洞宗における本山は二か所存在し、福井県にある永平寺と横浜市にある總持寺をもって、一つだけの「総本山」ではなく、「二大本山」として両立しております。そして今年は、その大本山總持寺を開かれました瑩山禅師の700回忌にあたり、令和6年4月1日~21日まで毎日そのご遺徳を偲ぶ大法要が總持寺にて行われたのですが、有難い事に御縁を頂き、今回の大法要に携わることができました。

~瑩山禅師曰く~

 道元禅師は曹洞宗開祖として歴史の教科書にも載るほど認知度は高いのですが、瑩山禅師に関しては道元禅師と比べると露出もやや少なく、よく知らないという方が多いのではないでしょうか。ですが、道元禅師の教えを受け継ぎ、それまでは限定的だった曹洞宗の教義をより多くの悩める民衆を救うべく世に広められたことにより、今日の曹洞宗は日本最大級の大教団として発展したという点については正しく瑩山禅師の功績なくしてはありえないとまで言えるのです。

瑩山禅師が撰述された「坐禅用心記」にはこんなお言葉が記されております。

「常に大慈大悲に住して、坐禅無量の功徳、一切衆生に回向せよ」。

 そもそも仏教とは、生きる上での避けられない苦しみから如何に解脱するかというお釈迦様自身の研究・参究により始まっています。その為にお釈迦様は俗世との関わりを絶ち、出家という形をもって修行生活に励んだのです。ともすれば仏教とはいかにも厭世的に思われがちではありますが、また違う一面も持ち合わせているのです。それは悟りを開かれた後に多くの苦しむ人々と触れ合い教えを授け、寄り添い、そして救いの道を示されたお釈迦さまの行動に現れているように、他者を思いやる慈しみの心を持つことの尊さをお説きになられている点です。瑩山禅師は特にこのようなポイントを重要視し、先のお言葉を残されたのだと思います。

~微笑みの国で気付かされたこと~

 一昨年、世界的にも最大の仏教国であるタイを旅行した際に、タクシーにスマートフォンを置き忘れたことがありました。それに気づいた時にはタクシーは降車地点のホテルよりも随分離れた所におり、しかも異国であるが故にドライバーまで連絡を取り次ぐことに中々、難儀しました。結果的には何事もなく手元にスマートフォンは戻りましたが、その際、仲介をしてくれたホテルスタッフやわざわざ届けに戻ってきてくれたドライバーは一つも嫌な顔をせず、むしろ笑顔で「無事に戻ってきてよかったね!」と一緒に喜んでくれたのです。

 勿論、少しではありますが、御礼を手渡そうとしました。しかしそれも受け取らず「困っている人を助けるのは当たり前。特に同じ仏教を重んじている日本人ならわかるでしょ?」と言葉を残してそれぞれ戻っていってしまったのです。たった数日間ではありますが、慣れない異国での日々に少し卑屈になっていた私の頭には、正しく雷が落ちたような衝撃でした。それと同時に心がじんわり温かくなったのを感じました。他者を慈しみ、思いやる心の尊さ、ひいては仏教とは慈悲の心を重んじる教えなのだとそこで改めて気付かされたのです。また、ただひたすらに人々の救済を願い、例え坐禅中に於いてもその大慈悲の心を忘れてはいけないという瑩山禅師のお言葉に込められたそんな想いにも、日本を遠く離れたタイの地で触れられた気がしました。

~50年に一度の尊い御縁~

 瑩山禅師にちなんだ回忌大法要は50年ごとにしか行われません。つまり、次回の大法要は2074年の開催になります。そんな尊い仏縁を結べたことに感謝をし、今回の700回大遠忌にて学ばせて頂いたことを胸に、精進して参りたいと思います。                            

合掌

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